「社内SEはお客さんからあれこれ言われることもないし楽なのかな。」
エンジニアの転職先としてとても人気の社内SE。
本記事を読んでいただいているあなたも、何となくでも社内SEへの転職を考えているのではないでしょうか。
実際に社内SEへ転職して仕事をしているからこそ言えるのは、「楽だからという理由で社内SEへ転職すると必ず失敗する」ということ。
そこで本記事では、「楽だから」と社内SEへ転職すると失敗する理由を書いていきます。
実体験をあげながら説明しますので、楽だからと社内SEへ転職して後悔しないよう役立ててください。
それではご覧ください。
タップできる目次
転職の失敗はミスマッチ
「社内SEが楽だから」という転職が失敗する理由は、”仕事内容と働く条件のミスマッチ”が起きるからです。
転職での成功とは?
転職の成功を一言で表すと、
「自分が希望する働き方を実現できる環境を得られること」
です。
たとえば、仕事にやりがいや成長を求め常にチャレンジできる厳しい環境がいい人なら、日々の業務を淡々とこなしていく仕事は物足りなくイマイチな会社だと感じるでしょう。
一方で最低限生活できる収入があればよく、仕事よりもプライベートや趣味を楽しみたい方であれば、常にプレッシャーがある厳しい仕事環境には耐えられませんよね。
ちなみに、ぼくがSIerから社内SEへの転職で優先したことはワークライフバランスです。
SIer時代にはメーカーやユーザ企業の情シス部門とお付き合いが多く、社内SEの仕事内容や大変さは身近に感じていました。
そこで社内SEだけを条件に選ぶのはなく、成熟した業界で落ち着いて働ける会社を探しました。
働き方の条件がハッキリしないと転職は失敗する
失敗しない転職を実現するためには、あなたが仕事に何を求めて何のために働くのかハッキリすることが大切です。
あなた自身が何を優先して働きたいのか分からなければ、どんな会社でも結局ミスマッチになってしまいます。
前職では、社内SEへ転職し数年後に戻ってきた先輩がいました。
戻った理由を聞いてみると、
「お客さんから厳しい要求をされるのが嫌で発注する側に回りたく社内SEへ転職したが、企画から保守運用までシステム全体をカバーしないといけないのでキツかった。」
とのこと。
”発注する側が楽”という思いだけで転職し失敗した例と言えるでしょう。
あなた自身が何を優先したいのか分からないのであれば、「この条件なら耐えられるか?」を基準に考えてください。
社内SEが楽なんじゃないかという勘違い
過去のぼくもそうだったように、”社内SEは楽”と思われている方は少なくありません。
では、なぜそんな勘違いをするのでしょうか?
となりの芝生は青く感じる
「案件を受注して開発するのではなく、発注する側に回りたい。」
SIerで開発を続けているとこのように考えることがあります。
それはSIerの仕事は顧客からの納期や要求がとにかく厳しいからです。
顧客から受注した仕事の納期は基本的に顧客側が決めます。
そして、同時期に複数の開発案件が重なるのもいつものこと。
開発終盤になると、開発中のシステムに対して顧客からいろんな要望が来ます。
さらに複数案件が重なって納期が近いと、それぞれの納期を守るために残業が増えてきます。
もちろん全ての要求を受けるわけではなく、予算と納期を考えて交渉をします。
でも軽い要求でも複数案件で続くと、ボディブローのように響いてきます。
このように顧客から要求を受けキツい状態が続くと、
「発注側は好き勝手言うだけだから楽で良いよなー。」
と思うようになります。
でも社内SEへ転職した今思えば、発注側にもそれなりのしんどさがあると分かりました。
請負側だけしか経験がないと中々気付けません。
ブラック企業は会社に問題あり
必ずしもSIer=ブラック、社内SE=ホワイトではありませんので注意してください。
業界すべてが問題なのではなく、残業続きのブラック企業というのはその会社に問題があります。
ぼくが前職でお付き合いのあったお客さんのなかにも、残業続きの会社がありました。
とあるサービス業で、やり取りしていた部署は情シス部門。
情シスなので社内SEに該当するわけですが、常に稼働は高く休日出勤もしょっちゅうありました。
一方で、大手SIerでもワークライフバランス重視で残業を抑えている会社もありました。
SIerでしんどい仕事をずっと続けていると、だんだん周りが見えなくなっていきます。
お客さんや取引先など、あなたと関連がある会社の働き方を見回して視野を広げてください。
社内SEで大変なことは何か
社内SEにはSIerとはちがう大変さがある、と言ってもSIerしか経験がなければイメージが出来ませんよね。
そこで、ぼくがSIerから社内SEへ転職して感じている大変なことを解説します。
自社システム全体を知らないといけない
SIerで開発を請け負う場合、多くは業務システム全体を知る必要はありません。
それは請負開発だとシステムの一部機能を切り出して開発することが多いからです。
たとえば、基幹システムのデータを取り込んで特定の目的に利用するためのWebシステム開発があったとします。
請負側はWebシステム部分の仕様は全て理解する必要がありますが、開発するWebシステムは業務システム全体からみるとほんの一部。
一方で発注元の社内SEは、基幹システムからWebシステムまで全ての仕様と業務全体の流れを理解しないといけません。
社内業務と業務を支えるシステムの両方を理解し、適切な仕様を決定することを求められます。
止まらない問い合わせの電話
ユーザからの問い合わせを受けるサポート業務も、社内SEにとって大事な仕事です。
そのため、ユーザからの問い合わせで忙殺され他業務が進まないこともしょっちゅうあります。
もちろん請負側でもお客さんからの問い合わせはあります。
ただ社内SEのサポート業務とは問い合わせの数が全然ちがいます。
保守システムから逃げられない
請負側では、開発依頼や見積もり依頼があった案件をいつも受けるわけではありません。
利益にならなそう・開発要員がいないといった理由で引き受けないこともあります。
過去に、ぼくもお客さんの依頼を聞いて見積もりを行った上で、
「この案件は要件が厳しすぎて失敗しそうだな。」
「今は開発要員が空いてないから対応できない。」
といった理由でお断りすることがありました。
一方で社内SEだと、利益にならないから・要件が厳しすぎるからといって開発をしないわけにはいきません。
難易度が高く厳しい開発でも、自社ユーザがシステムを使っている以上社内SEがシステムのお守りをする必要があります。
企画から開発、運用までトータルスキルが求められる
社内SEに求められるスキルは超上流~下流工程まで多岐にわたります。
自社システムを開発するためには、システム導入の経営への影響やユーザ要件の抽出、設計開発・テストまで一連の工程が必要です。
例えば社内で使用するワークフローシステムを開発するなら、次のような作業が発生します。
- 業務の問題点分析
- システム導入による経営への影響分析
- ユーザへの仕様ヒアリング
- システム設計
- 開発・テスト
- 保守・運用
- システム導入後の影響分析
さらに、ユーザや開発責任者を説得するためのコンサル的な能力も必要です。
また、AIやIoTなど最新知識も要求されます。
詳しくはこちらの記事でも解説していますのでご覧ください。
あなたはどんな仕事をやりたいのか
これまで書いてきたように、転職を成功させるためには「自分は何を優先して仕事をしたいんだろう?」と考えることが大切です。
ぼくはワークライフバランス+腰を据えた開発
ぼくが転職で重視したことは次の2つです。
- ワークライフバランス
- 腰を据えたシステム開発
SIer時代は常に複数案件を請け負って開発を行っていたため、残業が多くなりがちでした。
またいろいろな業界の顧客から請ける開発はそれぞれ全く異なるスキルが要求されるため、常に新しい技術を身に着ける必要がありました。
もちろん色んな技術に触れられることは面白い面も多く成長できます。
でもせっかく技術を覚えても次の開発では全く使わないことも多く、器用貧乏状態になっていることが気がかりでした。
そこで自社内のシステム開発に腰を据えて取り組める社内SEを希望し、ある程度残業を減らせる企業を探しました。
ただし、必ずしも社内SE=残業が少ないわけではないことは経験上知っていました。
そこで求人企業の業態やビジネスモデルなども合わせて慎重に考えました。
社内SEの仕事内容を知ること
当たり前の話ではありますが、社内SEへの転職を希望するのなら社内SEの仕事内容を知っておきましょう。
それは、転職後に「思っていた仕事内容とちがった。」とならないようにするためです。
現在の仕事で社内SEのお客さんから話を聞ければ、生の声が得られてベストです。
ただ社内SEのお客さんや知り合いなんていないよ、という方も多いでしょう。
個人のつてがなければ、プロの転職エージェントを使うのがおすすめです。
ぼくは社内SEのお客さんから話も聞きつつ、転職エージェントも利用しました。
転職先の会社について転職エージェント担当者から”残業は安定して少ない”という情報を教えてもらい、結果的に転職できました。
転職エージェントは企業情報にも詳しく転職に必要な事務作業も無料で代行してくれるため、働きながらの転職活動に上手く活用しましょう。
まとめ:楽な仕事は無い
納期のプレッシャーが少ないなど、SIerに比べると社内SEの方が楽な部分もあります。
ただし、SIerにはない社内SEの大変さを後悔してしまうのも、結局は社内SEのことをよく知らないからです。
本記事で書いた社内SEの大変さは、社内SEの方なら”そうそう”と感じていただけるはず。
ぼくの転職先でも、システム会社からの中途採用者がすぐに辞めてしまったこともありました。
先入観を捨てて転職先を判断して、ぜひ社内SEへの転職を実現させてください。
それでは。