「社内SEへの転職を考えているけど、実際にどんなことをするのかイメージできない。」
「社内SEでのシステム開発ってどんなことをするの?請負SEとはやることが違うの?」
ぼくは、SIerで10年以上エンジニア職を経験したあと、社内SEとして現在の会社へ転職しました。
転職前は社内SEの仕事内容を何となくはイメージしていましたが、今思えば細かく理解できていませんでしたね。
SIerと社内SEのどちらも経験した今になって感じることは、同じシステム開発でも社内SEとSIerではやることが全然違うということ。
そこで本記事では社内SEでのシステム開発の流れを解説したいと思います。
現在進行形でぼくが実践している内容ですので、社内SEの開発内容や請負SEでの開発との違いを理解できるはずです。
社内SEへの転職を目指しているエンジニアの方は、ぜひご覧ください。
タップできる目次
社内SEのシステム開発プロセス
社内SEとしてシステム開発を行う流れはこちら。
- 開発システムを企画
- 見積もりを取り稟議を通す
- 開発を外注へ依頼
- 社内環境へ導入
- 運用、ユーザーサポート
開発するシステムにはいろんな種類がありますが、ここでは社内で使う勤怠管理システムを導入する前提とします。
社内SEとしてシステム開発する場合、自社開発することはほとんどありません。
上記のように、基本的にはSIerなどのソフトウェア企業へ発注し開発してもらう流れです。
それぞれの工程を詳しく見ていきましょう。
システム企画が開発のスタート
いきなり開発に取りかかる訳ではなく、まずシステム企画作業が社内で行われます。
社内の問題や将来への展望などをふまえて課題を洗い出し、課題解決のためにどんなシステムが必要かを検討します。
システムを使って課題を解決し業務を発展させることが目的です。
たとえば、従業員の出退勤をExcelへ記入し管理しているなら、
「毎日時刻を記入するのがめんどうで、つい忘れてしまう。」
「簡単に書き換えられるため、記入した時刻が信頼できない可能性がある。」
「労働時間や残業時間の集計が大変。」
といった課題が見えてきます。
そこで勤怠システムを導入し、社員証とリンクさせ自動で出退勤時刻を記録したいという必要性が出てきます。
ユーザ部門や上層部との調整を進める必要があり、ある意味一番大変で手間がかかる作業と言えるでしょう。
見積もり・稟議を通して予算を確保
企画したシステムに社内からGoサインが出たら、つぎは開発予算の確保に動きます。
あたりまえのことですが、企業でシステム開発を行うためにはお金が必要です。
ただし適当な額で予算を組むわけにもいきません。
そのため外注のソフトウェア企業へ見積もりを依頼し、開発に必要な金額を確定させます。
その後、確定させた金額をもとに社内稟議にかけて予算を確保します。
稟議をかけるために稟議書を作るのですが、上層部に通すためのキッチリした文書を作るのは中々大変です。
ちなみに、文章力を向上させる対策としてはやはり読書がおすすめです。
ただし文章力向上の解説本や自己啓発本ではなく、小説など好きなジャンルの本で十分です。
社内で稟議が通って予算を確保できれば、ようやく開発のスタートです。
システム開発を外注する
確保した予算にそってソフトウェア企業へ開発を依頼します。
ただし外注すればそれで終わり、全部お任せで何もしなくてよい、というわけではありません。
まず外注するにあたり開発するシステムの要件を固めます。
- システムにどんな機能が必要なのか
- どうやって運用するのか
- 誰がどんなふうに使うのか
外注先のソフトウェア企業と仕様をつめながら、設計⇒コーディング⇒テストと開発を進めていきます。
完成したシステムを導入する
外注したシステムが完成したら社内環境へ組み込んでいきます。
導入工程では社内SEの仕事も多く、外注先のソフトウェア企業だけにお任せすることはありません。
というのも、システムを導入するには、社内サーバーやネットワーク、端末など社内のリソースにアクセスする必要があり、セキュリティ上社外の人間にすべてを任せることはできないからです。
また、導入日程や時間の計画、社内業務との調整なども社内SEが行います。
そして、導入後に想定通りの動作をするか確認するのも社内SEの役割の一つ。
開発自体は外注先のソフトウェア企業が行いますが、完成したシステムのユーザに対する責任は情報システム部門が負います。
保守運用・ユーザへの教育
システム開発は導入して終わりではありません。
使いはじめのシステムは動作が不安定なことも多く、ユーザも操作に慣れていないため問い合わせも増えます。
また、システムを使い続けるには状態の監視や定期的なメンテナンスも必要です。
たとえば、勤怠管理システムが導入されると、Excelで管理していたころとはガラッと運用が変わります。
入力方法に慣れるまでは問い合わせが来るでしょう。
ソフトウェアのアップデートやアラートの監視など、システムが稼働している限り保守運用の作業も続きます。
請負SEの開発とは何が違うのか
上に書いたシステム開発の流れを見ていただくと分かるように、システム開発で社内SEが行う作業は開発前後の仕事の割合が多いです。
というのも、基本的に自社内で開発を行わないからです。
たとえば上の例でいうと、社内SEが頑張るのはシステム企画、稟議を通す、保守運用サポートなど設計やコーディング外の仕事がほとんど。
バリバリ開発を行いたい人にとっては、技術にダイレクトに触れる機会は少ないため物足りなく感じるでしょう。
つまり社内SEと請負SEでは、システム開発全体で担う工程が違う、と言えます。
社内SEに求められるスキルは?
社内SEはシステム企画、仕様の決定、運用保守などの工程を担当するため、請負SEに必要なスキルとは若干違ってきます。
ここでは社内SEに必要なスキルを書いていきます。
システム全体を見渡せる上流工程スキル
開発するシステムの全体を把握して最適な仕様を決める、比較的上流工程のスキルが求められます。
というのも、上のシステム開発の流れに書いたように、社内SEがカバーする範囲は企画~運用までとかなり幅が広いです。
一方でソフトウェア企業が請け負うのは開発、導入の部分と全体から見ると一部分。
・自社が抱えている課題を分析して必要なシステムを選定する。
・基幹システムとの連携を考え、導入するシステムの仕様に落とし込む。
社内SEは、こういったシステム全体をカバーできる必要があります。
それではどうやって上流工程のスキルを身につければよいのでしょうか。
こちらの記事で解説しているように、ある程度の実務を経験して身につけるしかありません。
ただし上流工程の知識を体系的に得るために、資格を取るのも一つの有効な方法です。
たとえば、システムアーキテクト試験(SA)。
システムアーキテクトは情報処理推進機構(IPA)が運営する高度情報技術者試験の一つで、システム開発の上流工程を主導し、業務ニーズに応じた情報システムをデザインする上級エンジニア向けの資格です。
システムアーキテクトは難易度の高い資格なので、書籍を使ってじっくり勉強してから受験することをおススメします。
ぼくが使ったこちらの参考書は、特に午後II試験(論述式)の小論文で時間配分や構成のまとめ方など実践的でとても役に立ちました。
ほかにも社内SEに有効な資格はこちらの記事でまとめていますのでご覧ください。
システム化する対象の業務知識
社内SEにとって、自社が展開する業界の業務知識はITスキルよりもある意味重要です。
というのも、導入するシステム全体のグランドデザインは、業務の内容や運用の知識が必須になるからです。
たとえば商品の受発注システムを導入するなら、
- どんな製品がどの頻度でどのくらいの量取引があるのか
- 担当者の人数はどれくらいか
- 製品の更新はどれくらいの頻度であるのか
など、業界知識がないと要件に落とし込めません。
一方で、請負側の開発エンジニアは社内SEが落とし込んだ仕様に従って開発するため、それほど深い業界知識は求められません。
業界知識を身につけるためには、やはり業務を経験していく必要があります。
まとめ:社内SEのシステム開発
本記事で紹介した社内SEがシステム開発で担当する流れは、ぼくが日常的に業務で行っていることです。
もちろん担当するシステムや企業、業界によっては更にいろんな工程が入ってくるでしょう。
ただ、大枠の部分ではおよそ本記事の流れになるはず。
これから社内SEを目指す方は、請負開発との違いを理解して転職活動に望んでください。
本記事がお役に立てれば幸いです。
それでは。